近年、オルゴール業界ではデジタル化されたオルゴールの存在が注目を集めています。
『デジタル化』といっても、オルゴールCDなどではなく、デジタル制御のオルゴールです。
オルゴールの基本的な進化は、およそ百年前のディスクオルゴール時代から止まったままでした。現代のオルゴールはアンティーク時代のオルゴールを効率良く量産化できるようにした、いわば廉価版です。
そこに風穴を開けたのが、デジタル制御で櫛歯を弾くオルゴールです。
デジタルオルゴールとかだと愛嬌がないので、勝手に『デジゴール』といってしまいましょう(どこかでそういう名前を聞いたことがあるのですが、一般的にはまだ使われていないようですね)。
ざっくりとご紹介すると、MIDIファイル(昔の着メロなんかに使われていました)の演奏を、そのままオルゴールで演奏できるようにした感じです。もちろんオルゴール独自の編曲上の制約を多少なりとも受けているとは思いますが。
ピンの代わりになるスターホイールと呼ばれる部品をデジタル命令で動かし、歯(鍵盤)を弾きます※スターホイールは従来はディスクの突起と櫛歯の歯を仲介するものなのですが、デジゴールの場合は直接使っています。
主に、長野県のスリックが開発しています。
櫛歯は、日本唯一のオルゴールメーカーである日本電産サンキョー製です。同じ長野の企業ということで、技術協力もしているようです(諏訪にサンキョーのオルゴール工場があります)。
プリモトーン
現在、一般的に流通しているのはカラオケ大手のエクシングと共同開発した『プリモトーン』です。2013年の11月に販売されました。
メーカー希望価格は……63万円!しかも税別なので消費税が入ると約70万円!
おいそれと買える金額ではないですが、300曲をゼンマイを巻かずに長時間楽しめるという利点があります。
40弁(40本の歯がある)ということで、音質は、サンキョーのトイオルゴール(18弁)や23弁と比べると当然良いです!
※高級な30弁あたりと比べると、後述の理由で悩ましいところです
編曲時間も何倍も長いですし、オルゴールを300個買う値段と考えれば格安だと思います。
熟練の職人によって1本ずつ丁寧に調律された櫛歯を、電子制御による巧みなメカニズムによって、CDやスピーカーの音では味わえない、箱が共鳴する生のオルゴールの音色を、ゼンマイを巻かずに何時間でもお楽しみいただけます。
専用SDカードには7ジャンル(クラッシック、ポップス、歌謡曲、洋楽、ヒーリング、童話/唱歌、キッズ・ファミリー)300曲の楽曲データが保存されており、本体にセットすることで生演奏をお楽しみいただけます。
残念ながら、プリモトーンは従来の高級オルゴールの音とは違い、響きにあまり余韻がありません(これが良いか悪いかは音の趣味によると思いますが)。また、大変高価なので、一般的にオルゴールを求める層にはあまり広まらなかったようです。
音の違いの原因は、エクシングがカラオケ用の編曲を流用して300曲という曲数を実現しているからだと思います。オルゴールの歯は従来は鳴らした後に少しの間振動してしまうので、同じ音の歯が複数本ない限り連続音を出そうとしてもノイズが乗りやすく、連続音を抑えたり、他の表現を使うオルゴール独自の編曲が必要になります。
その弱点を解消するためと、出来るだけ自社で作ったカラオケ用の編曲を活かそうとした結果、長く続く振動(余韻)を減らしてオルゴールらしさが減少してしまったのだと思われます(とはいえ、カラオケ用の編曲そのままとは思えません。手は加えていると思います)。
可能性としては、編曲ソフトを付けてオルゴールの実際の音色を奏でられる『楽器』として売りだせばいけるかも、と思ったのですが……。
とはいえ、たまに楽天などで売れているのも見かけます。
オルゴールというよりは、新しい音楽プレーヤーという括りなのかもしれません。
長時間演奏が可能な分、摩擦や金属疲労による歯の劣化が気になりますが、修理体制は整っていて、櫛歯の交換が出来ると聞いたことがあります。
カナデオン
実は、スリック社は従来の路線では、カナデオンというデジタルピアノを繋げて直接演奏が出来るオルゴールを作っていました。
私も実際に見たことがあるのですが、やはりデジゴールはオルゴールというよりは楽器として需要がありそうな気がします。
ユーチューブに動画がありましたので、ぜひご覧ください。
残念ながら、まだ市販はされていないようです。
プリモトーンは私どもでも取り寄せが可能ですので、ぜひご相談ください。
いろいろと書きましたが、デジゴールはまだ発展途上、これからの未来がある商品だと思います。
低価格化が進めばデジゴールの時代が来るかもしれませんね!
“デジタル化による新しいオルゴールについて①” への 1 件のフィードバック
コメントは受け付けていません。